急性大好き症候群
腕を組んで歩いている男女のカップル。


また……。


「美紗、帰ろう」


まだ妄想の世界にいる美紗の腕を引っ張って、あたしはその場を後にした。


「唯織!?」


後ろで太一くんの声がするけど気にしていられなかった。


いつもよりおしゃれな裕也。


可愛い服がよく似合う知らない女の子。


楽しそうな会話。


どれも今のあたしには手の届かないところにいた。


視界がぼやけるけど、あたしは歩く足を止めなかった。


……なんでこうなるの?


なんであたしだけ苦しくならなきゃいけないの?


誰か、助けてよ……。


ねえ、裕也は何も思ってないの?


地下鉄の中で、妄想世界からなかなか脱出できない美紗の横で、唇を噛みしめて泣くのをぐっと我慢した。



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