急性大好き症候群
日本史のプリント3枚で断念し、あたしはトイレに逃げ込んだ。


無理だって。頭が飽和状態だって。


既にさっき覚えたばかりの人名が頭から抜けつつある……。


一気に3枚もやり遂げたあたしを称えて欲しい。


このまま帰りたいけど、美紗を置いて帰るわけにはいかないしな。


大きく背伸びして、手を洗ってからトイレを出た。


「……え?」


美紗が視界に入って、足が止まった。


……裕也?


さっきまであたしが座っていた椅子に、一人の男が座っていた。


2人は顔を近づけて、楽しそうに笑って…………。


男の方は、裕也にしか見えなかった。


ずっと見てきた人。見間違えるはずがない。


2人を遠くから見つめたまま、あたしはその場から動けずにいた。






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