急性大好き症候群
椅子に座ったままぼーっとしていた。


たださっきの美紗と裕也の後ろ姿を思い出しながら。


……でもちょっと待って。


あれってほんとに裕也だった?


裕也の家はここから2キロ以上先だ。


しかも、ここから学校を挟んで全く逆の方向。


わざわざこっちに来るなんて考えにくい。


……でも。


あれはやっぱり裕也だと思った。


ずっと見つめてきた背中。


男らしい鍛えられた逞しい背中。


あたしはずっとその背中に近づくことだけを考えてきた。


見間違うはずがないのだ。


…………………………。


「……無理でしょ」


たとえ裕也本人だからって、あそこに戻るのは無理だ。


楽しそうだったし、行ったら完全にお邪魔虫だって。


彼氏なのに……とは思ったけど、これは人として当然だと思う。


いつ戻ろう…………………


「うわっ!!」


いきなり後ろから腕を引っ張られた。



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