急性大好き症候群
「中学生で付き合って一年半って、けっこう希少価値じゃない? 友達、みんな二、三ヶ月で別れてない?」

「まあ、確かに俺らくらい長いのは周りにはいないな」

「どっちから告ったの?」

「俺。中学校の入学式」

「マジで? 一目惚れ?」

「いや、あいつ、小学校から一緒だから」

「長年の恋が実ったわけだ」

「まあな」


短くそう言って、なんで俺こんなに話してんだと、太一があたしの隣で呟いた。


「それよりも、唯織の話だろ」

「あたし?」

「妄想で浮気されてるって嘆いてるわけじゃないんでしょ?」

「ああ、まあね……」

「浮気現場見たとか」

「けっこう見ました」

「うわ、最悪。なんで別れないわけ?」

「……なんで?」


……なんで?


「あれ? 『付き合えただけでいい』だっけ?」

「へ?」

「不良達に絡まれた時に言ってなかった?」

「……ああ」


そう言えば、そんなことも言ったっけね……。


「彼氏、そんなにイケメンなわけ?」

「イケメンって言うか……」


あの時のあたしにとって、裕也は本当に手の届かない存在だった。


眩しくて、輝いていて、憧れた。


そしてすぐに憧れは、恋心へと姿を変えた。


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