急性大好き症候群
人影があたしの横にしゃがみこんだ。


痛む腹部を手で押さえながら、公園の街灯に照らされた顔をじっと見てみる。


さらさらの黒髪に、瞳に影を作っている長い睫毛、すっとしている高い鼻、桜色の唇。


どっからどう見てもかっこいい男の子だった。


イケメンだ……。


「……警察は?」

「あんなん嘘に決まってんじゃん。単純な連中で助かったな」

「……ありがとう」


男の子はにっこりと笑った。


中学生だった。


あたしの中学と同じブレザーを着ていた。


あたしの家はここから三分くらいで着く。


近所の子かな……。


「彼氏に浮気されたなんて大声で電話してんじゃねーよ。あいつらじゃなくても絡んでくるぞ、あれ」

「はっ!? あんたも聞いてたの!?」

「あんたじゃねえ。太一」

「は?」

「だから俺の名前。小野寺 太一」

「あ、そゆこと……って、太一くんも聞いてたの!?」

「聞こえてきたんだよ。俺は偶然あいつらの後ろを歩いてた。そしたら、浮気だの、付き合えただけでいいだの聞こえてきて。そんでお前が絡まれてるから」

「…………」


あたし、そんなに大声で電話してたんだ……。


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