急性大好き症候群
さっきの場所に戻ると、裕也の姿はどこにもなかった。美紗が一人で黙々と勉強していた。


「あ……あれ?」


拍子抜けしてしまった。


あれ、あたし、幻覚でも見た?


「あれ? 男いねえじゃん。じゃあ大丈夫だよな。明日この間の公園に来て。待ってるから」

「あ、うん」


太一は腕を振りほどいてさっさと行ってしまった。


よっぽど図書館が嫌いなんだな……。


あたしが戻ると、美紗が顔をあげて笑っていた。


「あれ唯織、どこに行ってたの? 戻ってくんの遅いから、ちょっと心配してたんだよ」

「してないよね。集中していたあたり、心配してなかったよね」

「まあね」

「……裕也、ここにいなかった?」

「え?」


美紗が目を瞬かせた。


「板垣くん? いないよ。唯織、ついに幻覚まで見えるようになった?」


美紗に笑われてしまった。


あ、あれ……?


やっぱりあたし、感傷に浸り過ぎて頭おかしくなっちゃったのかなあ。


あたしは、本当にバカなのだ。


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