急性大好き症候群
「唯織も飲みなよう~。おいし~よ~」

「飲んでるし……」

「足りない足りない! 今日は泊まってっていいからさあー」


なんでこうなるんだろう。


「太一、中学生でお酒飲むのはやばくない?」

「だいじょーぶ。一つで終わるからさあー」


中学生に酒を飲ませてはいけない。


ていうか、未成年に飲ませてはいけないんですよ。


いつも冷蔵庫に常備してあるからと、太一が部屋に持ってきたのは缶チューハイだった。


さすがに中学生で飲むのはまずいと止めたけど、あたしが太一の腕を掴んだのはチューハイの中身を三分の一ほど飲み込んだ後だった。


中学生だからそれだけですぐ酔っちゃって、今の状況。


あたしは太一に勧められるがままに一口飲んじゃったけど、それだけだ。


「親とねーちゃんが飲むからさ、たまに一口くらい分けてもらってんの」

「だからって、一缶は多いって」

「じゃあ唯織、残りは飲んで」


ずいっと顔の前に差し出されたのは、既に四分の三は太一の胃に入ってしまった桃味のチューハイ。


残りは四分の一。


あんまり飲みたくないんだけど……。


ちらりと太一を見たら、目をわずかに潤ませてこちらを見ている。


なんだその、おねだりするような顔は!


しかも妙に可愛いし!


これで断るのは、すごくかわいそうな気がしてきた。


< 90 / 198 >

この作品をシェア

pagetop