急性大好き症候群
ベッドの傍に膝立ちで太一の額に触れてみる。


太一は抵抗しない。


「……唯織」

「何?」


太一が目を閉じたまま口を開く。


「俺、麻尋が好きだよ」

「うん」

「だから、正直今、嫉妬してる」

「うん」

「麻尋が他の男と一緒にいるのを想像するだけで、すげーむかつく」

「うん」

「俺は、麻尋一筋なのに」

「うん」

「唯織」

「何?」


太一が顔から腕を外して、そのままあたしの腕を掴んだ。


「俺らも浮気、しちゃおうか」

「は?」


やばい、太一が正気じゃない。


浮気って、ちょ、ちょっと。


あんなに一途で麻尋ちゃんが好きな太一が。


いつもあたしに惚気てくるくせに。


「俺、わざと嫉妬させたことないからさ」


俺が普通にやってることに嫉妬してくんの、麻尋は、と太一は言う。


「嫉妬させられるだけなんてフェアじゃないし」

「太一、落ち着いて」

「俺と浮気、してよ」

「太一──」


次の瞬間、太一が勢いよく起き上がって、太一とあたしの唇がぶつかった。


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