急性大好き症候群
深いキスは初めてだった。


触れるだけの軽いキスは裕也と何度も交わしたけど、それ以上の行為をする前に裕也の浮気が始まったから。


太一の舌はあたしの口内をうごめいて、うまいんだなと初めて感じるキスでもわかる。


裕也のキスは、どうだったっけ。


あの時は、長くて甘くて、幸せな気分になれたっけ。


確か、どこかを触られたような気がする…………


「!」


太一が服の上から胸を触ってきた。


あまりに突然で、思わず体をびくりと震わせる。


嫉妬させたいだけなら、キスしただけでも十分すぎるくらいでしょ。


太一、あんた何やってんの?


やっぱり酔っているせいだろうか。


その時、背中に固いものが当たった。


……え?


無意識に閉じていた目を開けると、太一があたしを見下ろしていた。


つまり、あたしは太一の下に組み敷かれているわけで。


「太一、ちょっと、これ以上は……」


潤んだ目であたしを見下ろす太一の肩を押した。


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