マーメイ ~人魚姫の恋~
物語の始まり
海の、深くて、深くて、もっと深い場所。
そこに私はいる。
人魚の住む、海の奥深く。
人魚は空想の生き物だって思ってない?
そんなことない。私たちは此処にいるもの。
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私はマーメイ。
[マーメイ・イフレ]
ここ、人魚の集う海の底の姫。
「あ~あ~・・・はあ・・」
ふとため息をついてみた。
お父様は最近街へのパトロールで忙しいらしく、ここ最近見ないし。
お母様はお父様の残してた仕事を片付けてるし。
姉弟なんて、私にはいないし。
でも、お勉強をする気にもなれないし・・・。
つまり、暇である。
人魚のお友達も、私にはいない。
王族の私は、このお城からほとんど街へ出る機会がないからだ。
「お父様とお母様は普段から街へ出てるのに・・・」
昔から何回も誘拐されかけている私を、お父様とお母様はあまり街へ行かせてくれない。
人魚の国でもいくつか分類があり、
私たち「王族」と、
王族に仕える「仕族」。
一般の人魚、「平族」。
それぞれ専門の職をもつ人魚も入れると、かなり細かく分類されるけど、
私を何回も狙ってくるのは「狂族」と言われる、人魚でありながら
人魚の道から外れてしまった、ごく一部の者達。
・・・・・。
はあ・・・。
外に出るのを禁じられていながらも、実は私は、「ある場所」へと、
ひっそりと出かけているのだ。