To beloved Mr.Rabbit【短編】
校門で待ち始めて10分が経った頃、職員用の昇降口から兎田先生が出てきた。
久しぶりに見るその顔に見惚れながら眺めていると、先生は苦笑した。
どうやら教室まで迎えに来てくれるつもりだったらしく、職員室から丸見えのこの校門に、私が居るのを見付けて、慌てて来てくれたらしい。
「でも、一緒に帰ったりして大丈夫なの?それにお別れ会みたいなのもあるんじゃないの?」
私が心配そうに尋ねると、先生はまた笑った。
「もう先生じゃないし。『お別れ会みたいなの』もサボってきた」
「でも大人の付き合いがあるんでしょ?」
「俺はまだガキだからイイの。それより続きの話しよっか……」
あ、そっか。
「続きの話」をする為に一緒に帰るんだもんね。
あれ、「話の続き」?
まぁどっちでもいっか、一緒に帰れるんだし。
私は一緒に帰れる嬉しさと、もう会えなくなるかもしれない不安を胸に、歩みを進めた。
先生の家も私の家も同じ方向で、さほど離れてはいないらしかった。
先生の母校は私の通っている高校らしく、そう考えたら頷けた。