To beloved Mr.Rabbit【短編】
「そうじゃないんだ。そうじゃなくて、俺の問題」
先生の、問題……?
先生は歩みを止め、私を見た。
私もそれにならって足を止め、先生を見る。
「大人は、生徒を好きにならない。ルールを破らない。俺は守れなかったから」
先生は、眉をひそめて笑う。
それは、そういう気持ちからだったの?
「いつの間にか、余裕無くなってたよ」
爽やかな笑顔は、余裕の表れ。
私が好きって言う度に、そうやって困った様に笑っていたのは、そういう理由からだったの?
これは、夢?
ホント?嘘?冗談?
「う、ウサギさんッ、キスして……」
私がそう言って先生の腕を掴むと、先生は優しく笑った。
そして私の額に、先生の唇が触れた。
「違うよ、口にだよ」
掴んだ手を揺すると、先生は私の頭を撫でた。
「俺が、本当に大人になれるまで……お前が、ありすが本当の恋を知るまで……それまでおあずけな」
どういう事……?
私達、想い合っているんじゃないの?
「ウサギさん……」
私は先生の顔を見上げた。
先生の顔は、やっぱり寂しそうだった。