To beloved Mr.Rabbit【短編】
そう自覚したら、私の胸の鼓動は激しくなり、顔だけが熱くなっていった。
「先生やるねぇ」
「お前らも、見てたんなら止めろよ」
「すいませーん」
そんな私を無視するかの様に、廊下に居たこの学校の制服を着ている男子達と話し始めるその人。
て、今「先生」って呼ばれてた?
確かにその人は男子に「先生」と呼ばれた。
でも私の記憶では、この学校にこんな先生はいない。
私の通うこの学校は私立だ。だから先生の入れ替えなんてそうない。
しかも三年も通っているのに、私がこの先生を知らないはずなんてない。
「あ、あの、先生なんですか?」
私はその謎を解明すべく、先生と呼ばれたその人に聞いた。
でもその謎は、アッサリと解明された。
「おう。昨日から教育実習で来てる、兎田(ウダ)です。担当は数学で、三年一組の山崎先生に指導してもらってます……て感じかな。よろしく」
そう言ってまた爽やかに笑う兎田先生。
私の顔はきっと真っ赤で、もう俯く事しか出来なかった。
兎田先生は三年一組。
私は三年九組。
階も違うし、知らないのは当たり前だった。