To beloved Mr.Rabbit【短編】
想いの国へ
今日も私はウサギさんを捜している。
スカートを翻して、数学準備室も、食堂も、職員室も、全部全部捜し回ったのに
「いない」
今日は何処にも居ない。
見付からない。
クラスの子に聞いてみても、見なかったと言う。
残るはトイレか――
あッ!
パッと閃き、私は残り20分になった昼休みの時間を、少しでも有意義に過ごせそうな予感のする場所へ向かった。
階段を上った先にある扉。
その扉を開けると、冷たい風が校内に勢いよく流れこんできた。
身を縮めながらその扉を大きく開き、屋上へ出た。
「ウサギさん発見!」
歩みを進めると、この寒い中、屋上のベンチに座りながらパンをかじっている先生を見付けた。
先生は私の声に気付き、こちらを思い切り振り返った後、大きく肩を落とした。
私はスキップしながら先生に近づいて行く。
「よくこんな寒い時季に屋上でご飯食べる気になるねぇ」
「……お前から逃げてんだ」
「あ、やっぱりぃ」
そんな事だろうと思ったぁ。でも私はめげない!
「はい、ウサギさん」
私は自分のとは違う、もう一つのお弁当を先生に差し出した。