純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
それを分かっていたのか、その日は仕事をドンドン回してきた桐生さんの優しさが、ちょっとだけうれしかった。
相変わらず、罵られたけれど。
だれど、しびれを切らしたのは、歩の方。
終業間近にやってきて、少し仕事の打ち合わせをした後、私が終わるのを待っていたんだ。
「歩?」
「お疲れ。もう、帰るだろ?」
「――うん」
まるで当たり前かのように、私を先導するように歩き出す。
「歩、この間は無理言ってごめん。お客様、すごく喜んでた」
「あぁ、あれね。梓の頼みだからな」
そんな風に言ってくれるのが、とてもうれしい。
けれど、なんとなく心に隙間風が――。