純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
「そんなことない。私も歩の仕事はすごいと思う。今更、質を下げて他の旅行会社になんて頼めない。私の方こそ、これからもお願いできると……」
「そうだな。よろしく」
彼が差し出した手は、恋人としてのそれではない。
その手をがっちり握った時、2人の関係は本当に終わった。
「だけどさ、ホントに惜しい女を逃した」
「そうだよ? 極上の物件だったのにね」
泣きそうになるのをごまかすようにそう言うと、彼が握ったままの手を引き寄せて、私はあっという間に彼の胸の中に納まってしまった。
「ごめん。最後にするから」
彼の鼓動がいつもよりずっと速い。
「好きだったよ、梓」
耳元のそんな囁きは、私の涙腺を崩壊させるのに十分だった。