純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
「大丈夫だ。ゆっくりやれ」

周りに聞こえないように、小声でつぶやいた彼に驚いて視線をあげると、小さく頷く。


ガタガタ震えている手で、私も指輪を受け取ると、彼の手を取ってそれを差し込んだ。

ここで、入らなくて苦戦する人もいるのだけれど、なんとかするっと入ってくれて、はーっと大きく息を吐き出してしまう。


緊張が緩んだのもつかの間。


「誓いのキスを」


そんな声が耳に届いて、思わずビクッとする。

あるのが当然。
そんなこと分かっていたのに、頭が真っ白になって……。

いや、キスの真似だけだ。大丈夫……。



少し屈んで、桐生さんにベールを上げてもらう。
あんなに薄い布一枚なのに、それが無くなった途端、彼の顔が異常に近く思えて。




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