純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
耳元に響く彼の吐息は私を安心させる。
ゆっくり目を閉じると、別の世界に飛んで行ったかのように、現実を忘れられそうな気がする。
「桐生さん……」
「純悪女は毒を吐くのが仕事だぞ?」
「――うん」
彼のそんな言葉に、涙が止まらなくなる。
「あんな男に、手を触れられて嫌だった」
「あぁ」
「あんな男に、結婚するなんて言われて、気持ち悪かった」
「あぁ」
「あんな男に、殺されるなんて……」
「もう、いい」
次第に声が出なくなってしまった私の頭を抱えるように抱き寄せる。
それからしばらく、涙が止まることはなかった。