純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
「桐生さん、私、帰ります。木本もしばらくは出てこないわけだし」
“迷惑”彼の放った言葉が、私の中でグルグル回る。
何故だか分からない。けれど、とても悲しくなってしまって。
「寒いから、送ってください」
「あはは。それでこそ、純悪女」
そんな我儘を、そう聞き流してくれる彼に、今は甘えてしまいたい。
車の中は二人とも無言だった。
木本がいなくなって、もう彼の部屋にいる理由もなくなって……。
「お前、本当に……」
静かに車を降りた私に、話しかける彼。
「独りで大丈夫なのか?」
「――はい」
精一杯の嘘だった。彼の言うとおり、真っ赤な嘘。
嘘は吐くなと言われても、吐かなければならない嘘だってある。
「何かあったら、電話しろ」
「はい」
「約束だぞ? 安永」
何度も念を押す心配性な彼に、ニッコリ笑って見せた。
ありがとうございましたの意味を込めて。