純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~

「桐生さん、その節はお世話になりました」

「いえ、頑張ったのは安永です。どうかお幸せに」


そんなことを口にした彼に驚いて、ハッと顔をあげると、小さく会釈をして出て行った。



こんなご夫婦もいる。

どちらかというと、嫌な面を見てしまうことが多いのだけれど、そればかりじゃない。
それを手伝える私は幸せだと、心から思える式もある。



ふたりが帰った後デスクに戻ると、書類に目を落としたままの桐生さんが、私を呼ぶ。


「あっ、ハンカチありがとうございました。洗ってお返ししますからっ」

「いいよ、やる」

「いりませんし」


この人の前だと、なぜか素直になれない。
あなたに借りは作りたくないの! 
ハンカチをネタに、なにをやらされるかわかったものじゃない。
< 36 / 311 >

この作品をシェア

pagetop