純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
「桐生さん、その節はお世話になりました」
「いえ、頑張ったのは安永です。どうかお幸せに」
そんなことを口にした彼に驚いて、ハッと顔をあげると、小さく会釈をして出て行った。
こんなご夫婦もいる。
どちらかというと、嫌な面を見てしまうことが多いのだけれど、そればかりじゃない。
それを手伝える私は幸せだと、心から思える式もある。
ふたりが帰った後デスクに戻ると、書類に目を落としたままの桐生さんが、私を呼ぶ。
「あっ、ハンカチありがとうございました。洗ってお返ししますからっ」
「いいよ、やる」
「いりませんし」
この人の前だと、なぜか素直になれない。
あなたに借りは作りたくないの!
ハンカチをネタに、なにをやらされるかわかったものじゃない。