純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
厳かな雰囲気で、式が進んでいく。
このご夫婦、太田様は桐生さんの担当だったけれど、ふたりもまた、ここまでこぎつけるのにかなりの時間を要した。
初めて式場の見学に来られた時、何の問題もなく進んでいくものと思っていた。
けれど……。
神父様の声が、教会の中に響く。
全体的に照明を落として、淡い光の中、進む式。
新婦のベールが上げられて、二人がそっとキスを交わした時、それまでの道のりを思って、思わず泣きそうになる。
いちいち泣いていたら仕事にならない。
そんなことは、わかっているけど……。
「もう、ハンカチないぞ?」
「えっ?」
「さっき貸しただろ」
「あっ、はい」
ポケットに忍ばせてあったハンカチは、桐生さんが貸してくれたものだった。