純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
「そうですか。なんて運命的な出会い! 憧れます」
お客様の話を聞きながら、少し大げさなリアクション。
だけど、お客様にとっては今が一番盛り上がっている時期なのだから、そのくらい褒め称えても足りないくらいだ。
今回は、初めての訪問だったので、早速式場となる教会の見学の約束を取り付ける。
これだけで、かなりの客が落ちる。まぁ、初日にしては上出来といったところだ。
「はぁ、疲れた」
一組のカップルを丁寧に送り出した後、裏に引っ込んで休憩室の自販機でコーヒーを買う。
「なんて運命的な出会い! って、常套句だな」
「なっ……」
「おい、性悪。今回も褒め殺しか?」
性悪はどっちだ。
彼は5つ上のプランナーの責任者、桐生徹(きりゅう とおる)。
背は、180センチ近くはあるだろう。
155センチほどしかない私とは、完全に頭ひとつ分違う。
一見細そうに見えて、肩幅はしっかりあるから、黒いスーツもよく似合う。
そして、実に上品な立ち振る舞い。
けど、中身は最低。
ローズパレスは、比較的新しい式場で、スタッフも他と違って若い。
だから活気もあるけれど、気配りが足りないこともある。
そんなことを後ろでフォローするのが、この男の役割。