ひまわりのうた
その日。
朝まで快晴だった空は昼には崩れはじめ、俺が帰る頃にはどしゃぶりの雨になっていた。
傘を忘れた俺は、誰もいない教室で雨が弱まるのを待っていた。
『あれ?
大輝どしたのー?』
教室のドアが開いたと思えば、笑顔で俺の前に座る優愛。
『傘忘れたから雨弱まんの待ってんだよ。
忘れ物か?』
『まぁねー。
あった♪』
優愛は自分の机から小さなポーチを取り出すと、また俺の前の席に座ってポーチを開けた。
『イチゴチョコと普通のチョコどっちがいいー?』
『普通の』
『はいっ♪』
俺の手にチョコを乗せると、優愛はポーチからピンク色のチョコを口に放り込んだ。
『おいしー♪』
『…甘』
『だからおいしーんぢゃん!!』
『お前チョコ好きだよなー』
『うん☆
おいしーぢゃん』
幸せそうに食べる優愛。
『帰んなくてもいいのか?』
『んーこのどしゃぶりじゃ、傘さしててもびちゃびちゃになっちゃうよねー…
あたしも弱まるの待とっかな♪』
『傘持ってんなら俺に貸せ』
『え、あたしが濡れちゃうでしょ』
『入れてやるから』
『あたしの傘ちっちゃいから無理だよー』
『デカいの買っとけよー』
『大輝がデカいのがいけないんだよー』
そういうと、ちっこい手で俺の肩をバシバシ叩いた。
あれ?
優愛って意外にちいせーな。
『お前…
改めてみるとチビだな』
バシッ
有り得ない力で頭を殴られた俺は触れてはいけない部分だった事に気付いた。