花乙女
「やぁん、湊ったらぁー、意地悪しないでよ」

花梨の標的は“安藤 湊-アンドウミナト-”へと変わった。
彼女もまた、副会長であった。

肩下までの漆黒の髪、同じ色の切れ長の目、それが湊の特徴だ。

その漆黒の瞳に映るは、デフォルトの世界だろうと思わせるほど深い色だ。

宙に浮いたと思っていた双眼鏡は、湊の手の中にすっぽりと収まっている。

そして、双眼鏡を取り替えそうと、ピョコピョコと跳ねる姿は、さながら小学生のようである。

「そんな事してないで、仕事して」

と言って花梨の両頬を引っ張る。

「らりふんふぉよー!」

「ふふっ、楽しそうなこと」

小さな笑い声と、凛とした声が生徒会室に響いた。
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