ボクノトナリデ、
「櫂(かい)、いい加減にして。」
手を掴んだ彼は、ナンパ男だと思われる人の名前を呟いて少し怒ったように沙柚を掴んでいる手を引き離した。
ー…綺麗……ー
櫂、という人の手を掴んだ彼は、とても綺麗な顔をしていた。
透き通るような白い肌に。
林檎みたいに紅い唇。
高く通った鼻。
大きく澄んだ瞳。
それにかかる、ゆるくパーマのかかった栗色の髪。
くさいけど、まるで王子様みたいな。
「…おーい!玲菜?大丈夫?」
「え?あ、うん。」
やば、見惚れてた。
「まさか、李衣智(りいち)に見惚れた?」
「え?」
隠しても無駄そう。
「…うん。綺麗だから。」