『わたし』は『あなた』になりたい
しかしミナは気づかぬようで、はしゃぎながら話を続ける。

「ねぇ、あのお人形、まだあるの?」

「ありますけど…そうですね、良いですよ」

そう言って彼女は立ち上がった。

「わたしの部屋に置いてあるんです。どうぞ、こちらです」

2人は案内され、彼女の自室に入った。

寝室だが、そこにも数多くの人形があった。

「なっ何か人形に見られているようで、落ち着かなくない?」

マカは数多くの人形の眼から逃れるように、ミナの背後に隠れた。

「マカったら、お人形さんの眼が怖いのぉ? 可愛い♪」

「…何にも知らないって良いよな」

「ん? 何か言った?」

「別に」

ミナにはり付いた笑みを見せながら、マカはただならぬ気配に身を竦めた。

「こちらです。マカ先輩」

彼女は一体のアンティークドールをその手に持ちながら、こちらへ向かって来た。
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