『わたし』は『あなた』になりたい
その人形は、金色の巻き髪に深緑色の丸く大きな瞳が印象的で、紫色のシルクのドレスを身にまとっていた。

彼女とアンティークドールを眼に映した瞬間、マカの眼が一瞬赤く染まった。

「っ!?」

しかしすぐに両目を強く閉じ、再び開いた時には赤い色は引いていた。

「ねっ、マカ。すっごく綺麗な人形でしょう?」

「えっええ、そうね。それ、どうしたの?」

「いただいたんです。友人から」

彼女は嬉しそうに、人形を見つめる。

「わたし、ずっと欲しかったので、すっごく嬉しかった」

うっとりと語る彼女の眼は、手元の人形に向いているものの、その心は別のところにある。

マカはギリッと歯を噛んだ後、笑みを浮かべた。

「人形、見せてくれてありがとう。リビングに戻りましょうよ。お土産にケーキ買ってきたの」

「あっ、そうだったんだ! 一緒に食べよう?」
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