『わたし』は『あなた』になりたい
マカは眼を閉じ、ミナの言葉を思い出した。

彼女の家からの帰り道、ミナは言っていた。

彼女の口癖を。

「わたしは美しい人形になりたいんです」

人形の美しさに魅了されていた彼女。

いつも人形を作りながら、ぼんやりと口癖を繰り返していた。

そんな彼女だからこそ、リリスからあの人形を受け取ってしまったのだ。

ミナが知っている彼女の魂は、あの人形に宿っている。

…彼女の部屋ではじめてあの人形を見た時、マカの眼には違ったモノが見えた。

人形を持つ彼女の姿が、人形に持たれている彼女の姿に見えたのだ。

美しい人形が人間として、彼女が人形として映った光景に、マカの人ならざる血が一瞬騒いでしまった。

そして悟ってしまった。

彼女の魂を救う方法は、無いのだと。

魔力のこもった人形を壊せば、彼女の魂をも傷付けてしまう。
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