絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「それで……」
「失礼、うちの秘書が何か……」
 きたー!!!おせーよ!!!
 巽はずいと前に出てからこちらを睨む。
 え、何?
 私別に選挙の秘密とかばらしてないよ!!!
「いやあいえいえ、若い秘書さんで頼もしい方ですな」
 って私何も喋ってないんですけど……。
「まだ勉強不足なもので、失礼なことがなければよいのですが」
「いやいや何も、楽しいお話をさせていただいただけですよ」
「下がっていい」
 小声で言われて、ホッとした。
 もう逃げよう、この世界から!!!
「失礼します……」
 急ぎ足で人並みを抜けて、ようやく広間から出ると、ポケットに入ったカードキーのナンバーを確かめてから部屋に戻る。
 いくら美味しい料理があったって、あんなおじいの相手してるんじゃどんな物でもまずくなる!!
 けど結局食べたのはカナッペ一枚……おなかすいた。あそうか、ルームサービス頼もう!!
 とりあえずベッドに腰掛け、メニューを開くと、ちゃんと分かるように日本語でずらりと書かれていた。ここは日本だから当然だ。すぐに受話器を取り、
「あの、ルームサービスを頼みたいんですけど……かにクリームスパゲティお願いします。一つ」
 と、注文。
 ……パフェも頼めばよかったかなあ。
 けど、巽から何か呼び出しがあったらいけないし……と、とりあえずスーツを着てスパゲティを食べる。
 しかし結局誰からの連絡もなく、時刻は11時を回った。
 もう宴会も終わりかけだろうと、勝手に秘書を放棄して風呂に入る。さっぱりして出て来てからは、テレビを見ながらテーブルの上にあったフルーツをつまみ、ナッツも食べた。
 巽……来ないのかな。
 というかこの部屋ツインだけど、ここで寝るんだろうか……。
 携帯に連絡するのも気が引けるし……。
 そう考えていると、突然ドアのロックが解除され、扉が開いた。
「……はい」
 巽は電話をしながら入ってくる。
「……はい、では……後ほど」
 すぐに電話は切れた。
「お疲れ様でした」
「ああ……」
 巽はすぐに上着を脱ぎ、窓際のソファに腰掛けてから、スカーフをはずす。脱いだ上着をソファの背にかけたことから、明日は違うスーツを着ていくことがすぐに分かる。
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