絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「ねえねえ、パフェ頼んでいい? ルームサービス」
「ああ……ついでにシャンパンも頼んでくれ」
「シャンパンだけ? なんか食べるものは?」
「適当に……」
「えー……サンドイッチでいい?」
「……欲しいなら頼めばいい」
 あれ、チョイス間違った?
 まいいや、電話は簡単に通じるし、注文はすぐに終わる。
「今テレビ見てたんだけどね」
「ああ……」
「3分でハンバーグを作るの、どう思う?」
「……どうも」
「なんかね、3分でハンバーグを作らなきゃならないんだったら、いっそのこと買えばいいのにねえ。そこまで手抜きする意味がわかんない」
「料理しない奴には、か?」
「え、たまには料理するよ!」
「……見たことないからな……」
「あそう、じゃあ今度カレー作るよ」
「……」
 だが巽は何の返事もしない。
「肩こり酷いの?」
 目を閉じて、首を回し続けている。
「最近な」
「年だよ、もう。揉んであげよっか」
「……ああ……」
 香月はベッドから立ち上がると、ソファの後ろまで移動した。
「えー! なんかこれ、肉硬くない??」
「凝ってるんだろ」
「え―、これすごい硬いよ! 叩こうか、とりあえず」
「……どっちでも」
 とりあえず肩たたき。
「……マシ?」
「全然きかん」
「そりゃそうだよ!! こんな硬い肉叩くならあのさ、肉叩きの方がいいよ絶対。鶏肉叩くやつ(笑)」
「揉んだらどうだ?」
「えええー、これ力いるなあ……だって全然肉が動かないよ? マッサージ師でもよんだら?」
「呼ぶくらいなら、お前に頼むか」
「呼べばいいじゃん!」
< 132 / 318 >

この作品をシェア

pagetop