絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
職場のホテルだからか、相当疲れていたからか。前者であってほしいと思うが、奴はきっと何も考えていないのだろう。今夜はさすがに短時間で終わり、巽は眠気に逆らわず、すやすやと腕枕をしながら眠っている。
香月も疲れたには疲れたが、それ以上に遠出していることに興奮しているのか、目が逆に冴えてしまっていた。
「……ねえ」
起こすのを覚悟で話しかける。
「……なんだ?」
「起きてた?」
「……寝てた」
「……ねえ」
「……」
間接照明で薄暗い中でも、巽が目を閉じているのが分かる。
「ねえ、どんな気持ちで私とエッチ、してるの?」
核心であった。二人の関係の。
「……どんな気持ちだと言ったら納得する?……」
低い声は室内に小さく響いた。
茶化しているのか、本気なのか。
「納得……」
「……お前は多分、どんな言葉でも納得しない。俺のことを信用してないからな」
「……信用……信用してないような人とはエッチしないと思うけどなあ」
「キスくらいなら、誰とでもできるがな」
「……」
香月は、天井を見つめて黙った。
自分は巽に、例えば、愛していると言われたら、嬉しいだろうか?
「……人間って不思議だね、子供がほしくないのに、エッチするの」
「……」
「私……あんまりエッチ好きじゃないのになあ……」
「あんなにあえいだ後では、何の説得力もないな」
「ッ、やめてよね!! おじさん! もう、寝よ、寝よ!!」
それからしばらくうとうとして、朝一番の始発の飛行機で北海道を出ると東京へ向かった。もちろんファーストクラス。経費削減ってこういうところですればいいのになあと、強く思わされるゆったりリクライニングできるシートで香月は堂々と体を休める。巽は新聞なんか読んでリラックスしてるが、せっかく飛行機に乗ったんなら外見ればいいのに。
その日は飛行場でバイバイ。香月はタクシーに乗せられて、巽が乗るリムジンとは別方向へ向かう。
だけどなんだか、少しだけ寂しくなって、タクシーに乗って5分もしないうちに電話をかけた。
「もしもし」
『なんだ?』
「ね、今度私、来週水曜日休みなの」
『……家に帰るかどうかその日にならんと分からん』
「だよね……」
分かっていたこと。相手の機嫌次第で帰って来るというわけではない。
『また、連絡する』
「うん、じゃまたね」
電話はすぐに切れる。
大丈夫、自分達の関係は、悪い方向へは向かってはいない。
香月も疲れたには疲れたが、それ以上に遠出していることに興奮しているのか、目が逆に冴えてしまっていた。
「……ねえ」
起こすのを覚悟で話しかける。
「……なんだ?」
「起きてた?」
「……寝てた」
「……ねえ」
「……」
間接照明で薄暗い中でも、巽が目を閉じているのが分かる。
「ねえ、どんな気持ちで私とエッチ、してるの?」
核心であった。二人の関係の。
「……どんな気持ちだと言ったら納得する?……」
低い声は室内に小さく響いた。
茶化しているのか、本気なのか。
「納得……」
「……お前は多分、どんな言葉でも納得しない。俺のことを信用してないからな」
「……信用……信用してないような人とはエッチしないと思うけどなあ」
「キスくらいなら、誰とでもできるがな」
「……」
香月は、天井を見つめて黙った。
自分は巽に、例えば、愛していると言われたら、嬉しいだろうか?
「……人間って不思議だね、子供がほしくないのに、エッチするの」
「……」
「私……あんまりエッチ好きじゃないのになあ……」
「あんなにあえいだ後では、何の説得力もないな」
「ッ、やめてよね!! おじさん! もう、寝よ、寝よ!!」
それからしばらくうとうとして、朝一番の始発の飛行機で北海道を出ると東京へ向かった。もちろんファーストクラス。経費削減ってこういうところですればいいのになあと、強く思わされるゆったりリクライニングできるシートで香月は堂々と体を休める。巽は新聞なんか読んでリラックスしてるが、せっかく飛行機に乗ったんなら外見ればいいのに。
その日は飛行場でバイバイ。香月はタクシーに乗せられて、巽が乗るリムジンとは別方向へ向かう。
だけどなんだか、少しだけ寂しくなって、タクシーに乗って5分もしないうちに電話をかけた。
「もしもし」
『なんだ?』
「ね、今度私、来週水曜日休みなの」
『……家に帰るかどうかその日にならんと分からん』
「だよね……」
分かっていたこと。相手の機嫌次第で帰って来るというわけではない。
『また、連絡する』
「うん、じゃまたね」
電話はすぐに切れる。
大丈夫、自分達の関係は、悪い方向へは向かってはいない。