絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 香月は大きな瞳で見上げて、固まった。
「冗、談、……」
 そのまま頬にキスしてやる。唇じゃなかっただけ、良かっただろう?
「おやすみ」
 附和は一人、扉の外に出てボタンを押した。驚いた香月の顔はすぐに見えなくなってしまう。
 さあ……、面白かっただろう? 
 結局、セミスイートをとっていたにも関わらず、一人で眠ることになってしまった。
 それくらい、香月は衝撃的ともいえるほどの美人であり、時間をかけてゆっくり落としていきたいという久々に狩猟めいた欲望が不破の中で湧き起っていた。
 カードキーでドアを開け、靴を履いたままベッドに倒れ込んで、一時思考停止。
 巽の顔を思い出す。
 ……香月さん、また、どこかで会いたいね……。
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