絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 そんなわけっ!
 抵抗して起き上がって反論しようとしたが、左手を掴まれると思うように動けない。
「弱い耳を舐られたか?」
 耳元で声が聞こえ、身体中がカッとなった!
「キスしただけ! ほっぺだよ!」
「……そうきたか……」
 巽は、空いた左手で、香月の顎を掴むと、顔を上げさせた。
「俺の女になるというのなら、覚悟しろ。あんまりふざけてると、手加減しないぞ」
 ってどういう……。
 考える間もなく、唇が合わさり、舌が侵入してくる。
 お酒の口でキスされるのはあんまり好きじゃない。だってなんだか自分まで酔いそうな気がするから。
 それなら、まだタバコの味がまだいい。
「明日仕事は?」
 巽は唇を外すなり、香月をお姫様抱っこをすると、隣の寝室のドアへと向かう。
「ない。辞める」
 香月は、完全に言い切り、胸を張る。
「……7時には起こすぞ」
 7時に起こしたって遅刻だよ……。
 心の中でそう思いながら、簡単に巽からのキスを受け止める。ああ、駄目。絶対明日会社なんて、行かない。

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