絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
逃げられないように、腕を強く、強く掴み、恐ろしいほど無表情で顔を見上げた。
手には幾分もの力が入っている。
「人をバカにするのもいい加減にしろ」
しかし、巽はいとも簡単に、その手を振りほどいた。
「いや、待って!」
開こうとしているドアノブを制す。
「待って。聞いて、お願い。本当に思ってるの。あなたが今結婚できないのなら、待ってる。だけどそれが20年先なら、先に子供を作らせて? お願い」
精一杯真剣に巽を見た。
「……もう会わない方がいいな」
信じられないほどの虚無感に襲われた。息をするので精いっぱい、立っているのがやっと。
「結婚は誰とでもできる。俺にこだわる必要はない」
「え…………」
「お前がしたいのは、結婚だ。そんな軽い気持ちで俺と結婚しても、いづれ後悔する」
「なっ、軽い気持ちって……」
「俺は誰とも結婚するつもりはないし、子供も作らない。お前はそれに納得しないだろう。このまま一緒に居続けても、同じ話の繰り返しだ」
「いい、する! 私は……」
「口先だけだ、どうせ後で後悔するに決まっている」
自分の顔だけが、どんどん固まって行く。
「普通の家庭を作りたいのなら他をあたれ」
巽はその言葉を堂々とこちらの目を見て言う。
「ほっ……かって……、……」
後が続かなくてただどんどん視線が下がっていく。
「あなたと……ずっとずっと……ずっと一緒にいたいだけなのに……」
足はそれでもしっかりと立ってはいたが、声が震えた。
「……、子供を先に作るとか……、そういうことと、ただ一緒にいるだけとは全く違う」
「寂しいの……いつも。不安なの。不安で不安で信じられなくて、いつも私、あなたを疑ってばかりで、それが嫌で。けど納得できなくて。だから、結婚したいの。結婚すれば、安心できると思った……」
香月は巽の体に腕を回した。ここで自分が折れなければ、確実に失う。そう、自分はさみしくて結婚を迫ったのだ。決して、周囲が羨ましくてという理由ではない。
「今日は休みなんだろうか、本当に仕事なんだろうか。私の何がよくて付き合ってくれてるんだろう。ただ、遊んでるだけなんじゃないんだろうか……」
「……そんなに不安か?」
少し、声が優しくなった気がした。
「不安だよ……。あなたが側にいてくれる保証は、どこにもない。だから……子供がいれば私のことは忘れないと思った」
心を込めて、言い切る。今言い切って、巽の気持ちをつなぎとめておかなければいけない。
「……何があっても、子供は作らない。二度とあんな想いはしない」
手には幾分もの力が入っている。
「人をバカにするのもいい加減にしろ」
しかし、巽はいとも簡単に、その手を振りほどいた。
「いや、待って!」
開こうとしているドアノブを制す。
「待って。聞いて、お願い。本当に思ってるの。あなたが今結婚できないのなら、待ってる。だけどそれが20年先なら、先に子供を作らせて? お願い」
精一杯真剣に巽を見た。
「……もう会わない方がいいな」
信じられないほどの虚無感に襲われた。息をするので精いっぱい、立っているのがやっと。
「結婚は誰とでもできる。俺にこだわる必要はない」
「え…………」
「お前がしたいのは、結婚だ。そんな軽い気持ちで俺と結婚しても、いづれ後悔する」
「なっ、軽い気持ちって……」
「俺は誰とも結婚するつもりはないし、子供も作らない。お前はそれに納得しないだろう。このまま一緒に居続けても、同じ話の繰り返しだ」
「いい、する! 私は……」
「口先だけだ、どうせ後で後悔するに決まっている」
自分の顔だけが、どんどん固まって行く。
「普通の家庭を作りたいのなら他をあたれ」
巽はその言葉を堂々とこちらの目を見て言う。
「ほっ……かって……、……」
後が続かなくてただどんどん視線が下がっていく。
「あなたと……ずっとずっと……ずっと一緒にいたいだけなのに……」
足はそれでもしっかりと立ってはいたが、声が震えた。
「……、子供を先に作るとか……、そういうことと、ただ一緒にいるだけとは全く違う」
「寂しいの……いつも。不安なの。不安で不安で信じられなくて、いつも私、あなたを疑ってばかりで、それが嫌で。けど納得できなくて。だから、結婚したいの。結婚すれば、安心できると思った……」
香月は巽の体に腕を回した。ここで自分が折れなければ、確実に失う。そう、自分はさみしくて結婚を迫ったのだ。決して、周囲が羨ましくてという理由ではない。
「今日は休みなんだろうか、本当に仕事なんだろうか。私の何がよくて付き合ってくれてるんだろう。ただ、遊んでるだけなんじゃないんだろうか……」
「……そんなに不安か?」
少し、声が優しくなった気がした。
「不安だよ……。あなたが側にいてくれる保証は、どこにもない。だから……子供がいれば私のことは忘れないと思った」
心を込めて、言い切る。今言い切って、巽の気持ちをつなぎとめておかなければいけない。
「……何があっても、子供は作らない。二度とあんな想いはしない」