絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 全くずうずうしい最上だ。
「え(笑)。もう年だし。10も違うのよ」
「そんな10くらいなんとでもなったのにぃ」
 若々しい最上と堅い兄では無理だろうなと、口をへにして唸った。
「で、彼氏はどこを経営してるんですか?」
「うーん、色々だけど、ホテルとか。ディズニーランドの近くのホテルはそうだよ。最近北海道にもできたの」
 ちょっと言っただけでもかなりの自慢になってしまうので、ここも軽く言っておかなければいけない。香月はその優越感に、一人勝手に浸った。
「へええええええ、すごい……お金持ち! 私んちとは全然違いますよ。私なんて今日のおかずコロッケですよ!!」
「いいじゃねーか、コロッケで」
 西野は、同士だと言いたげに、最上の肩に上にぽんと手を乗せた。
「そうだよ。コロッケの何が悪いの?」
 そういえば、巽がコロッケを食べているところを見たことはないなと思ったが、もちろんすぐに考えないようにする。
「分かってないなあ……。じゃあ香月先輩は何食べてるんですか?」
「えー……?」
 言われて考えてみる。
「うーん……。あんまり外食しないかなあ」
「作ってるんですか?? まさか先輩が」
 寝返った子供がうーんと唸ったので、元に戻しながら、最上は当然作らないでしょうと言いたげに、こちらをちらりと見た。
「まさかって失礼な! 最近はね、ちょっと勉強してるのよ。教室までは行ってないけど」
「え、彼氏は一人暮らし?」
「うんそう、結構年上だし」
「何歳?」
「38」
「じゃあ、半同棲?」
 西野が鋭く突っ込んだ。
「……してた時もあるけど今は違う……。仕事から帰ってこない時もあるし」
「えっ、というか、いつからなんですか!? そんな同棲するくらいって!」
「えっと、知り合ったのは何年か前かな。……2年か。けど付き合うってなったのは最近だよ12月」
「なあんだ、そんないい人がいたんだ……、え、けど結婚断られたんですか?」
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