絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「まあな……。けど子供はいいよ。俺なんか血繋がってないし、嫁さんが若くて、時間があったらすぐ遊びに出たりするけどさ、それでも良かったなって思うよ」
 香月のためならと、彼氏を揺さぶるつもりで言ったが、逆に香月は返答に困ったのか、
「若いよね、ほんとに。まだミニスカートはける年だもんね」
と、あえて会話をずらした。
「ああ……」
 ミニスカートで思い出した昨日のこと。
「奥さん、仕事見つかりそう?」
 胸中どんぴしゃを突かれてドキリとする。
「え、ああ……どうかな。嫁さんの母さんの容態が悪くて、結構見舞い行ってるし……まだ焦らなくてもいいんじゃないかなとは思うけど」
「そっか……。大変なんだね」
「そんなことないよ」
 精一杯笑顔で、意味もなく陽太の腰を引き寄せる。陽太はというと、食欲が出だした頃で、口や首元を存分に汚しながら麺をすすっているところだった。
「巽さん、とは結構年が離れてるんだっけ?」
 特に失礼のない質問だろう。相手は男だ。
「うんそう。けど、逆に12も下でもミニスカートは履けないけどね」
「なんかそれ、俺がロリコンみたいじゃん!」
「そんなこと言ってないけどさ(笑)。いいよね、若い奥さんって(笑)。皆に自慢できるし、ミニスカートはかせてさ、ほらー、ミニスカートの嫁だぞーって」
「どんな自慢だよ(笑)」
「逆に10上の奥さんならできない自慢だよ」
「……、まあ、確かに」
 想像が悪いのか、あまり喜んで見られるものではない。
「奥さんは今遊びに行ってるの?」
「ああ……うん。たまにはな」
 本当は、昨日も出て行って、今日も出て行くって。どこで何やってるんだか、疑いたくもなる……。
「そうだねえ」
 既に陽太は食べ終えて目の前の客人にも慣れ、椅子の下に降りようともがき始めている。
「そろそろ……悪いな」
 先に帰ろうと、席を立って陽太を抱き上げた。
「あ、私も帰るよ」
< 219 / 318 >

この作品をシェア

pagetop