絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
巽は視線を落として続けた。
「香港の時のようなことがこの先、ないとは限らない。そうなれば、お前も危険に巻き込むこともあるだろう」
「そんなに危険な仕事なの?」
香月はただ巽の顔をじっと見つめた。
「一般人のお前でも、一度危険な目に遭っているから分かるだろう? ……リュウとのことに巻き込まれたことを思い出せば、少なからず怖いと思うだろう」
言い返す言葉が見つからず、ただ、今まで考えないようにしていた現実を目の当たりにする。
巽はただの会社の社長ではない。
拳銃の引き金を慣れた手つきで引き、目の前で誰がが血まみれになっても当然とばかりに、自らの欲しい物を手に入れることだけを望み、事を成す。
その欲しいも物が、前回は権利書であった。それが多分、時によれば麻薬だったり、人身だったりするのかもしれない。
あの大きな手は、血で幾度も染まったんだと思う。
知らなかったわけじゃない。ずっと考えないようにしてただけだ。
日本ではさすがにそんなに派手なことはしていないだろうが、この前も香港に出張していたから、もしかしたら、人一人くらい撃っているのかもしれない。
それでも好きなのは、ただ、優しいからで……。
それでも結婚したいのは、結婚すれば、そんなことはしないようになると勝手に決め込んでいるから。
「思わないか?」
「……思うけど……」
「今、こうやってただ一緒にいる分にはそれほど影響しないだろう。だがそれが、結婚となるとお前に俺の危険を背負わせることになる。
お前がそんな結婚がしたいわけじゃないのは分かっているし、俺もそんな結婚がしたいわけじゃない」
「……」
すべては夢であり、妄想であり、想像であって、現実ではない。
「ここに居たいというのなら、置いてやる。だがそれは結婚しないということ前提だ」
睨むほどに見つめた。
巽が真剣に、真面目に答えを出した結果だということが伝わったからか、不思議と涙は出なかった。むしろ、自分の中で、何か納得できたような気さえした。
「……」
「それでお前が納得できるのなら」
「香港の時のようなことがこの先、ないとは限らない。そうなれば、お前も危険に巻き込むこともあるだろう」
「そんなに危険な仕事なの?」
香月はただ巽の顔をじっと見つめた。
「一般人のお前でも、一度危険な目に遭っているから分かるだろう? ……リュウとのことに巻き込まれたことを思い出せば、少なからず怖いと思うだろう」
言い返す言葉が見つからず、ただ、今まで考えないようにしていた現実を目の当たりにする。
巽はただの会社の社長ではない。
拳銃の引き金を慣れた手つきで引き、目の前で誰がが血まみれになっても当然とばかりに、自らの欲しい物を手に入れることだけを望み、事を成す。
その欲しいも物が、前回は権利書であった。それが多分、時によれば麻薬だったり、人身だったりするのかもしれない。
あの大きな手は、血で幾度も染まったんだと思う。
知らなかったわけじゃない。ずっと考えないようにしてただけだ。
日本ではさすがにそんなに派手なことはしていないだろうが、この前も香港に出張していたから、もしかしたら、人一人くらい撃っているのかもしれない。
それでも好きなのは、ただ、優しいからで……。
それでも結婚したいのは、結婚すれば、そんなことはしないようになると勝手に決め込んでいるから。
「思わないか?」
「……思うけど……」
「今、こうやってただ一緒にいる分にはそれほど影響しないだろう。だがそれが、結婚となるとお前に俺の危険を背負わせることになる。
お前がそんな結婚がしたいわけじゃないのは分かっているし、俺もそんな結婚がしたいわけじゃない」
「……」
すべては夢であり、妄想であり、想像であって、現実ではない。
「ここに居たいというのなら、置いてやる。だがそれは結婚しないということ前提だ」
睨むほどに見つめた。
巽が真剣に、真面目に答えを出した結果だということが伝わったからか、不思議と涙は出なかった。むしろ、自分の中で、何か納得できたような気さえした。
「……」
「それでお前が納得できるのなら」