絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
6月24日の水曜日。本日巽は北海道へ出張のため、不在。しかも次にお互いの休みが合う日、つまりデートの予定は未定。
いつものことながら、溜息が出る。こんな時化た気分の日は、昔なら無理矢理最上を誘って気分転換していたが、今はもうそんな友達もいない。かといって、女2人で、しかもどれほども仲良くない先輩と飲みに行くのはどう考えても少し気が引けたが、約束してしまったものは仕方ない。
予定の午後7時。今日の今井は店舗に応援、ではなく、視察、のためそこから直接約束した店へ来ることになっていた。既に香月は駅ビルに着き、ぶらぶらしている状態である。
もしかしたら、仕事の都合で遅れることがあり得ると踏んではいたが、駅ビル最上階近い本屋に行くことは時間的にはばかられたので、仕方なく2階辺りで欲しくもない洋服を眺めているのである。
そして携帯が鳴った。すぐそこまで来ている、か、もしくは、遅れそうという連絡に違いない。
「はい、もしもし」
『もしもし、今井です……ごめんね、私、ちょっと熱があって』
「えっ、大丈夫ですか!?」
まさかの病欠に、覚悟が無駄になって、少しうんざりくる。
『うんでも大丈夫。私の弟みたいなもんがね、今香月さん探してくれてると思うの』
「えっ……弟、さんですか?」
おとうと??
『うんまあ、悪いから、そこのお店連れて行って、奢ってあげてって指示してるの、ごめんね、ほんっと』
「えっ、そんな! 悪いですよ! また今度でいいですから!」
『あの、もしかしたら知り合いかもしれないから』
「え?」
『し、出版社に行ってるのよ。で、弟さんのことも知ってるっていうから、もしかしたら、香月さんも知ってるかもしれないし』
「え……はあ……」
そう言われても、編集者に知り合いらしき人はいない。
『で、ごめんなさいね。この埋め合わせは必ずするから! あの、ごめんなさい。もう病院着くから切るわね』
「あ、はいじゃあ、お大事に……」
『あっ、その、子に電話番号教えちゃってもいい? あの、どこにいるか迷ってると思うの』
「えっ、あ、はあ……」
『うんじゃあね、電話かかってきたらとってね、ごめんね、ありがとう』
慌ただしく電話は切れた。
まいったなあ……。知らない人で、しかも弟と2人で飲みに……いや、弟じゃないんだったか、弟らしき人か?
とりあえず駅ビルから出ようと、エスカレーターを下っていると、再び携帯が鳴った。登録していない番号だから、きっとこれが今井の知り合いだろう。
「はい」
やけくそ半分で、無心で出た。
いつものことながら、溜息が出る。こんな時化た気分の日は、昔なら無理矢理最上を誘って気分転換していたが、今はもうそんな友達もいない。かといって、女2人で、しかもどれほども仲良くない先輩と飲みに行くのはどう考えても少し気が引けたが、約束してしまったものは仕方ない。
予定の午後7時。今日の今井は店舗に応援、ではなく、視察、のためそこから直接約束した店へ来ることになっていた。既に香月は駅ビルに着き、ぶらぶらしている状態である。
もしかしたら、仕事の都合で遅れることがあり得ると踏んではいたが、駅ビル最上階近い本屋に行くことは時間的にはばかられたので、仕方なく2階辺りで欲しくもない洋服を眺めているのである。
そして携帯が鳴った。すぐそこまで来ている、か、もしくは、遅れそうという連絡に違いない。
「はい、もしもし」
『もしもし、今井です……ごめんね、私、ちょっと熱があって』
「えっ、大丈夫ですか!?」
まさかの病欠に、覚悟が無駄になって、少しうんざりくる。
『うんでも大丈夫。私の弟みたいなもんがね、今香月さん探してくれてると思うの』
「えっ……弟、さんですか?」
おとうと??
『うんまあ、悪いから、そこのお店連れて行って、奢ってあげてって指示してるの、ごめんね、ほんっと』
「えっ、そんな! 悪いですよ! また今度でいいですから!」
『あの、もしかしたら知り合いかもしれないから』
「え?」
『し、出版社に行ってるのよ。で、弟さんのことも知ってるっていうから、もしかしたら、香月さんも知ってるかもしれないし』
「え……はあ……」
そう言われても、編集者に知り合いらしき人はいない。
『で、ごめんなさいね。この埋め合わせは必ずするから! あの、ごめんなさい。もう病院着くから切るわね』
「あ、はいじゃあ、お大事に……」
『あっ、その、子に電話番号教えちゃってもいい? あの、どこにいるか迷ってると思うの』
「えっ、あ、はあ……」
『うんじゃあね、電話かかってきたらとってね、ごめんね、ありがとう』
慌ただしく電話は切れた。
まいったなあ……。知らない人で、しかも弟と2人で飲みに……いや、弟じゃないんだったか、弟らしき人か?
とりあえず駅ビルから出ようと、エスカレーターを下っていると、再び携帯が鳴った。登録していない番号だから、きっとこれが今井の知り合いだろう。
「はい」
やけくそ半分で、無心で出た。