絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
まあ、大体予想していたとおりだ。今井よりもいくつか若いと思ったので、30歳くらいには見えていた。
先にアルコールが運ばれてくる。2人は、少し色がついた液体が入ったグラスを寄せ合わせ、音を鳴らした。
「あの、なんか、私の弟のことを知ってるって聞きましたけど……」
「僕が勤めてる出版社に直接関係があるわけじゃないんですけど、パーティでお見かけしたことがあって」
「ああ、そうですか」
紺野は見た目相応、クールであまり話題をもってこようとしない。
「ここは、今井さんとよく来るんですか?」
「そう……ですね。でも、2、3回かな」
「今井さん、熱が出たって言ってましたけど、大丈夫でしょうか……」
「たぶん大丈夫ですよ。頑丈な方ですから」
彼なりの冗談だったんだろう。香月は気を遣って笑った。
こうやってこちらが黙っていると、すぐに沈黙になってしまう。ピザを食べたら、帰ることになりそうだな、と香月は時計を確認した。
「あの、香月さんは、彼氏とかいますか?」
「えっ、あ、はい、いますけど……」
「あ、いやその、綺麗な、方だから……」
「えっ」
これは、もしやドタキャン大作戦という、そもそも、紺野を紹介するという仕組まれた罠ではないのか……。
知り合って会話も弾んでいないのにも関わらず、突然の恋愛話の浮上に香月は身構えた。
自然に身が縮こまり、固まってしまう。
「いやっ、いやあ……その……その……いえ、すみません、その、何をしゃべればいいか分からなくて……」
紺野は苦笑し、申し訳なさそうに頭を下げた。
ああ、単に口下手なのを隠そうと、女慣れしているふりをした……そっちか。
「その……あの」
「もしかして、紺野さんは今井さんのことが好きなんですか?」
思いついたので口にしたが、紺野は逆に落ち着いた表情を見せた。
「いえまさか! もう知りあって、5年……いや、8年くらいになりますけどそんなまさか」
紺野があまりにも「まさか」と連発するので、笑った。
「いつお知り合いになったんですか? 8年前というと、大学ですか?」
「ええ、そんなとこです」
微妙なはぐらかしだ。
先にアルコールが運ばれてくる。2人は、少し色がついた液体が入ったグラスを寄せ合わせ、音を鳴らした。
「あの、なんか、私の弟のことを知ってるって聞きましたけど……」
「僕が勤めてる出版社に直接関係があるわけじゃないんですけど、パーティでお見かけしたことがあって」
「ああ、そうですか」
紺野は見た目相応、クールであまり話題をもってこようとしない。
「ここは、今井さんとよく来るんですか?」
「そう……ですね。でも、2、3回かな」
「今井さん、熱が出たって言ってましたけど、大丈夫でしょうか……」
「たぶん大丈夫ですよ。頑丈な方ですから」
彼なりの冗談だったんだろう。香月は気を遣って笑った。
こうやってこちらが黙っていると、すぐに沈黙になってしまう。ピザを食べたら、帰ることになりそうだな、と香月は時計を確認した。
「あの、香月さんは、彼氏とかいますか?」
「えっ、あ、はい、いますけど……」
「あ、いやその、綺麗な、方だから……」
「えっ」
これは、もしやドタキャン大作戦という、そもそも、紺野を紹介するという仕組まれた罠ではないのか……。
知り合って会話も弾んでいないのにも関わらず、突然の恋愛話の浮上に香月は身構えた。
自然に身が縮こまり、固まってしまう。
「いやっ、いやあ……その……その……いえ、すみません、その、何をしゃべればいいか分からなくて……」
紺野は苦笑し、申し訳なさそうに頭を下げた。
ああ、単に口下手なのを隠そうと、女慣れしているふりをした……そっちか。
「その……あの」
「もしかして、紺野さんは今井さんのことが好きなんですか?」
思いついたので口にしたが、紺野は逆に落ち着いた表情を見せた。
「いえまさか! もう知りあって、5年……いや、8年くらいになりますけどそんなまさか」
紺野があまりにも「まさか」と連発するので、笑った。
「いつお知り合いになったんですか? 8年前というと、大学ですか?」
「ええ、そんなとこです」
微妙なはぐらかしだ。