絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
その、ありえないほどの榊の素っ気無い返事に、香月と紺野、今井は固まった。多分サラリーマンも不思議に思っただろう。
「じゃあ愛、行こうか。飲む前でよかったよ」
「え、あ、え……」
「じゃあ今日は悪いけどここで。また、後日連絡するから」
榊は意外にもサラリーマンと軽く挨拶を交わし、最後に今井に
「では」
と言い残し、
「駐車場あっちなんだ。悪いけどちょっと歩く」
「え、へ、あ、うん……あの、じゃあ、すみません、失礼します」
誰の顔も見ずにそれだけ言う。確かその後紺野が
「じゃあ」
の一言くらい返してくれたような気はしたが、今井の声はどんな風にも聞こえなかった。
榊の後ろを追いかけ、すぐに隣に位置する。おそらく角を曲がるまで今井はこちらを見ているだろうが仕方ない。
「えと……」
「どこかで飲みながらの方がいいか?」
「いや、全然……」
「じゃあやっぱり、東京マンションの近くでコーヒーでも飲むか」
そうだね、のそのどうでもよい返事より先に、角を曲がるとすぐに
「ね、なんでさっきあんな素っ気無かったの!?」
と、詰め寄った。
「クライアントの顔ってあんまり覚えてないんだ、普段。カルテがあればすぐに分かるんだけど」
「え?」
駐車場の管理人にチケットを見せた榊は、長い沈黙の後ようやくこちらを見た。
「何?」
訝しい表情をしているこちらを不思議に思って、笑顔を一旦やめたが。信じられない神経だ。
管理人はすぐに白のベンツを所有者の側に横付けさせて、ドアから降りる。
車の右側に立った榊は先にエスコートのためにドアを開けた。白のベンツは今日の衣装にとてもよく合っている。が、今はそんなことはどうでもいい。
先に乗り込み、一旦落ち着こうと、榊が運転席に乗り込むまで待つ。
「何? 患者なの? あの人」
シートベルトをかけている榊に、なんとか一言言った。
「だろうな、よくあるよ。適当にごまかすこと」
「え、え゛―!?!? 何言ってんの!?」
「何って、何?」
「じゃあ愛、行こうか。飲む前でよかったよ」
「え、あ、え……」
「じゃあ今日は悪いけどここで。また、後日連絡するから」
榊は意外にもサラリーマンと軽く挨拶を交わし、最後に今井に
「では」
と言い残し、
「駐車場あっちなんだ。悪いけどちょっと歩く」
「え、へ、あ、うん……あの、じゃあ、すみません、失礼します」
誰の顔も見ずにそれだけ言う。確かその後紺野が
「じゃあ」
の一言くらい返してくれたような気はしたが、今井の声はどんな風にも聞こえなかった。
榊の後ろを追いかけ、すぐに隣に位置する。おそらく角を曲がるまで今井はこちらを見ているだろうが仕方ない。
「えと……」
「どこかで飲みながらの方がいいか?」
「いや、全然……」
「じゃあやっぱり、東京マンションの近くでコーヒーでも飲むか」
そうだね、のそのどうでもよい返事より先に、角を曲がるとすぐに
「ね、なんでさっきあんな素っ気無かったの!?」
と、詰め寄った。
「クライアントの顔ってあんまり覚えてないんだ、普段。カルテがあればすぐに分かるんだけど」
「え?」
駐車場の管理人にチケットを見せた榊は、長い沈黙の後ようやくこちらを見た。
「何?」
訝しい表情をしているこちらを不思議に思って、笑顔を一旦やめたが。信じられない神経だ。
管理人はすぐに白のベンツを所有者の側に横付けさせて、ドアから降りる。
車の右側に立った榊は先にエスコートのためにドアを開けた。白のベンツは今日の衣装にとてもよく合っている。が、今はそんなことはどうでもいい。
先に乗り込み、一旦落ち着こうと、榊が運転席に乗り込むまで待つ。
「何? 患者なの? あの人」
シートベルトをかけている榊に、なんとか一言言った。
「だろうな、よくあるよ。適当にごまかすこと」
「え、え゛―!?!? 何言ってんの!?」
「何って、何?」