絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
榊は平然とこちらを見た。
「え、あ、だって、あの人、今井さんってゆーんだよ!! 今井真紀!!」
「え……ああ……。今井。ああ、なるほどな。ああ、今気づいた」
「え゛―――――!!! 信じらんない」
香月の悲鳴とは関係なく、車はゆっくりと駐車場から出ていく。
「信じらんないよ、昔の彼女の顔を忘れるなんて」
「だって(笑)、えーと、もう20年も前の話だぞ?」
「そんなになる?」
「なるなる。15年は軽く過ぎてる」
「けど20歳の頃からだったらそんな顔変わらないよ……」
「変わってないかもしれないけど……、俺は毎日違う人と注意深く接する仕事してるし、ああやって声かけられることも多いから」
「ああ……まあねえ……」
まあ、確かにそうだが。
「……今はね、私今井さんの部下なの。で、最近よく誘ってくれてて、今日もその帰りだったんだー……。でね、今井さん、最近病院で昔の彼氏に会って、昔を思い出してまた好きになったみたいなこと言ってた」
「ふーん……」
「久司のことだよね?」
「さあ」
「……分からないよね」
医者なんて、世の中に五萬といる。
丁度車は東京マンションを通り過ぎ、いつか2人で待ち合わせしたカフェの中に入った。中はやはりほの暗かったが、時間帯でフーズバーになっており、あの時よりも人が多く、少し落ち着く気がした。
2人は場違いなホットコーヒーを2つ注文すると、奥の席でさっそく本題に入った。
「何度か考えたんだがな、いつ連絡しようか」
「え、そんな重要な話?」
珍しい榊の言い出しに、香月は目を見開いて驚いた。
「さっきのサラリーマン、見ただろ?」
「え? あ、うん。何? あの人? 同僚?」
「いや、樋口のお兄様から愛を紹介してくれと連絡があったんだ。さっきのサラリーマンとの縁談だ」
「……な、に?」
香月は目を見開いて静かに次の言葉を待った。
「もちろん悪い相手じゃない。お兄様の研究所の本社の方にいる役員だ」
「役員って何……」
「監査役だ。まだ若い。38だ」
「え、あ、だって、あの人、今井さんってゆーんだよ!! 今井真紀!!」
「え……ああ……。今井。ああ、なるほどな。ああ、今気づいた」
「え゛―――――!!! 信じらんない」
香月の悲鳴とは関係なく、車はゆっくりと駐車場から出ていく。
「信じらんないよ、昔の彼女の顔を忘れるなんて」
「だって(笑)、えーと、もう20年も前の話だぞ?」
「そんなになる?」
「なるなる。15年は軽く過ぎてる」
「けど20歳の頃からだったらそんな顔変わらないよ……」
「変わってないかもしれないけど……、俺は毎日違う人と注意深く接する仕事してるし、ああやって声かけられることも多いから」
「ああ……まあねえ……」
まあ、確かにそうだが。
「……今はね、私今井さんの部下なの。で、最近よく誘ってくれてて、今日もその帰りだったんだー……。でね、今井さん、最近病院で昔の彼氏に会って、昔を思い出してまた好きになったみたいなこと言ってた」
「ふーん……」
「久司のことだよね?」
「さあ」
「……分からないよね」
医者なんて、世の中に五萬といる。
丁度車は東京マンションを通り過ぎ、いつか2人で待ち合わせしたカフェの中に入った。中はやはりほの暗かったが、時間帯でフーズバーになっており、あの時よりも人が多く、少し落ち着く気がした。
2人は場違いなホットコーヒーを2つ注文すると、奥の席でさっそく本題に入った。
「何度か考えたんだがな、いつ連絡しようか」
「え、そんな重要な話?」
珍しい榊の言い出しに、香月は目を見開いて驚いた。
「さっきのサラリーマン、見ただろ?」
「え? あ、うん。何? あの人? 同僚?」
「いや、樋口のお兄様から愛を紹介してくれと連絡があったんだ。さっきのサラリーマンとの縁談だ」
「……な、に?」
香月は目を見開いて静かに次の言葉を待った。
「もちろん悪い相手じゃない。お兄様の研究所の本社の方にいる役員だ」
「役員って何……」
「監査役だ。まだ若い。38だ」