絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
午前12時半。予想を30分も早まって再び携帯が鳴ったのに、ぼんやり着替えてから移動し、結局ラウンジで10分以上待たせてしまった香月は、どう機嫌よく詫びようか考えながらカウンター席に座った。
「……ごめん」
顔も見ずにまずその一言。
「寝てたか?」
「うん、少し……」
巽の手元には既にグラスが置かれていたが、中身が何なのかは分からない。
「相変わらず不機嫌なようだな」
「…………」
「だいぶ痩せたな。病院へは?」
「え?」
ようやく、目を合せた。2か月ぶりに見たその顔は何ら変わらなかったが、射抜くような目つきに、顔がこわばった。
「え、病……院?」
「痩せすぎだろう。こんな急に」
「そんな……痩せたかな……」
「体重量ってないのか?」
「昨日量ったけど……今日は……何?」
巽は食い入るように、顔を見つめた。
「部屋へ行こう」
「え!? 私まだ何も……」
言いかけたが、すでに巽は席を立っている。
「……」
先にたって歩き出した巽を香月は追いかけた。
無言でエレベーターに乗り、しばらく下がる。そしてたんたんと廊下を歩き、二度角を曲がった突き当たりの部屋に入った。
「え……!?」
扉が閉まるなり、それまでの冷静な歩き方とは違った荒い手つきで、何の目的があってかの服の腕の裾を突然捲り上げた。しかもひじ上まで、両方。
「な、何!?」
脈を測るつもりではないし、注射を刺すつもりでもないことは、明らか。何がしたいのか巽は腕を観察した後、それには答えず、
「何があった?」
的確な一言。
「あなたの過去を知った」。それが一番いい答え。
「……何も」
「……ごめん」
顔も見ずにまずその一言。
「寝てたか?」
「うん、少し……」
巽の手元には既にグラスが置かれていたが、中身が何なのかは分からない。
「相変わらず不機嫌なようだな」
「…………」
「だいぶ痩せたな。病院へは?」
「え?」
ようやく、目を合せた。2か月ぶりに見たその顔は何ら変わらなかったが、射抜くような目つきに、顔がこわばった。
「え、病……院?」
「痩せすぎだろう。こんな急に」
「そんな……痩せたかな……」
「体重量ってないのか?」
「昨日量ったけど……今日は……何?」
巽は食い入るように、顔を見つめた。
「部屋へ行こう」
「え!? 私まだ何も……」
言いかけたが、すでに巽は席を立っている。
「……」
先にたって歩き出した巽を香月は追いかけた。
無言でエレベーターに乗り、しばらく下がる。そしてたんたんと廊下を歩き、二度角を曲がった突き当たりの部屋に入った。
「え……!?」
扉が閉まるなり、それまでの冷静な歩き方とは違った荒い手つきで、何の目的があってかの服の腕の裾を突然捲り上げた。しかもひじ上まで、両方。
「な、何!?」
脈を測るつもりではないし、注射を刺すつもりでもないことは、明らか。何がしたいのか巽は腕を観察した後、それには答えず、
「何があった?」
的確な一言。
「あなたの過去を知った」。それが一番いい答え。
「……何も」