絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「へー、まあいるんじゃない?」
「あ、そういうのOKなんですか?」
「いや、OKというか、そんな人いっぱいいるよ、本社じゃ」
「え゛、た、たとえば?」
「時計部のお姉さまをはじめ、その他諸々。みんな松長さん好き」
「そんなことは分かってますよ! じゃなくて、実名!」
「そう言われると、わかんないけど……」
「そこが重要なんです!」
「えー、だって結婚してるじゃん、松長さん。まあ、チョコも、本気丸出しで渡してる人いっぱいいるけど」
「でも本人は義理としか思ってないっていう」
「そうそ、そうなんだよ。鈍いとかじゃないんだろうけどなあ、まあ、そこがいいんじゃない? 全然相手にしてないところが。好かれてるのが分かって利用するよりずっといいと思う」
「それは言えてますね」
カチ。
ドアの中で何か音がしたのでそちらを見た途端、突然扉が開き始めた。
「……!!」
もちろん術着の先生が出てくるだろうと予想して、無言で息を飲んで待つ。
「久司!!」
驚きのあまり、叫んでしまう。一緒に出てきた数人の医師がこちらを見たが、やはりただの白衣の榊は、構わずにこちらへ寄ってきた。
「あれ? どうした?」
そのいつもと変わらない冷静な対応に、こちらが声を荒げてしまうのもいつものこと。
「どうしてって!! ……あ! そう、西野さん、どうなの?」
「えっと……複雑骨折の?」
「ふく……骨折してるの?」
「あの……車ではねられた……」
「いや、俺が担当してる訳じゃないよ。今ちらっと新人のために見学してきただけ。大丈夫、今複合してるとこ」
「あそう……良かった」
「意識もそのうち回復するだろうし。まあ、担当じゃないから担当から直接聞いてくれ」
「そだね……うん、びっくりした」
「こっちのセリフだよ」
榊は最上その他に軽く会釈してすぐにその場を去る。
「私、あの人見たことある」
「あ、そういうのOKなんですか?」
「いや、OKというか、そんな人いっぱいいるよ、本社じゃ」
「え゛、た、たとえば?」
「時計部のお姉さまをはじめ、その他諸々。みんな松長さん好き」
「そんなことは分かってますよ! じゃなくて、実名!」
「そう言われると、わかんないけど……」
「そこが重要なんです!」
「えー、だって結婚してるじゃん、松長さん。まあ、チョコも、本気丸出しで渡してる人いっぱいいるけど」
「でも本人は義理としか思ってないっていう」
「そうそ、そうなんだよ。鈍いとかじゃないんだろうけどなあ、まあ、そこがいいんじゃない? 全然相手にしてないところが。好かれてるのが分かって利用するよりずっといいと思う」
「それは言えてますね」
カチ。
ドアの中で何か音がしたのでそちらを見た途端、突然扉が開き始めた。
「……!!」
もちろん術着の先生が出てくるだろうと予想して、無言で息を飲んで待つ。
「久司!!」
驚きのあまり、叫んでしまう。一緒に出てきた数人の医師がこちらを見たが、やはりただの白衣の榊は、構わずにこちらへ寄ってきた。
「あれ? どうした?」
そのいつもと変わらない冷静な対応に、こちらが声を荒げてしまうのもいつものこと。
「どうしてって!! ……あ! そう、西野さん、どうなの?」
「えっと……複雑骨折の?」
「ふく……骨折してるの?」
「あの……車ではねられた……」
「いや、俺が担当してる訳じゃないよ。今ちらっと新人のために見学してきただけ。大丈夫、今複合してるとこ」
「あそう……良かった」
「意識もそのうち回復するだろうし。まあ、担当じゃないから担当から直接聞いてくれ」
「そだね……うん、びっくりした」
「こっちのセリフだよ」
榊は最上その他に軽く会釈してすぐにその場を去る。
「私、あの人見たことある」