絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「けど、それは香月さんが決めることだから、ね?」
 何か言わなければ、何か言わなければ……。
「私は」
 そう、何か……。
「俺は、それでもお前のために言っている」
 巽の突然の発言に、全員が注目した。
 巽は香月をしっかりと見て、しっかりと発言したが、それを受け止めきれない自分がいる。
「無理ですか? 今からでも」
「えっ……」
 香月の顔を見つめる最上の顔を、香月も見つめた。 
サクラも黙って返事を待っていた。
「何?」
 香月は2人に投げかけた。
「西野さん」
 最上は短く答えたが、香月は眉をひそめて声をあげた。
「できるわけないじゃん! 結婚なんて。友達としてしか関わっていけないよ!」
「この先何があっても?」
 なぜかレイジのことを思い出した。
「うん……、今の彼氏と別れても。
この先もし西野さんのことを好きになることがあったとしても、私はずっと友達でいつづける」
 次の最上のセリフを待ったが、彼女は言葉に詰まったのか、なかなか声が出てこなかった。
「……うまくいきませんね」
 やっと出た一言は、皆が納得する言葉だった。
「……いいじゃん。最上が一番うまくいってるじゃん」
 素直にそう思ったので言ったが、最上は何も答えなかった。
その後無事手術は成功し、西野は家族に見守られながら病室に運ばれた。陽太もそのまま病院の託児所に預けられることになり、とりあえずしばらくはこのまま親子で病院にいることになったので、安心して4人はそれぞれの車に乗った。
 車中、香月は巽の隣で眠った。最高に疲れた一晩であり、巽が、そもそも何故東京マンションまで来ていたのかということも、忘れていた。
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