絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
あまりの大声に
「どうしたの香月さん(笑)」
と太政に笑われる。しかし、ここで大人数で話をしてもいいと思い、香月は目の前の太政に、
「二課の斉藤さんって彼女がいるんですか?」
成瀬は笑った。
「斉藤? あのマッチョ?」
前髪を長く伸ばし、真ん中で分け、耳のあたりでハネさせているいかにもモテヘアーの太政は、少し眉を潜めた。
「はい」
「いやー、知らない。香月さん狙ってんの?(笑)」
「いやそんなまさか、滅相もない(笑)」
一同爆笑。
「一時期あったわよね、隣の恵が付き合ってるって噂が」
やはり真中夫人、女は噂話に強い。
「ありましたよね、僕も聞きました」
と、成瀬。
「へええええ、それは吃驚! あんなおとなしそうな恵さんが……、斉藤と……」
太政がこんなに目を丸くしたところを始めて見たが、どんな顔をしても、整った顔に変わりはない。
「斉藤さん最近香水きつい時があるのよねえ、あれどうにかしてほしいわ」
「やっぱり彼女ができたからじゃない?」
「……どうかと思うけどねえ」
それからしばらく斉藤の話で盛り上がり、二課の噂話をしているうちに、時刻は12時5分前、つまり、閉店5分前である。
太政が暗算一秒で割り勘の計算をし、香月一人が驚き、勘定は終わった。
「香月さん、大丈夫?」
「やだもう、何飲んだのよー」
「顔色悪いよ」
靴を履こうと思って、靴を探しながら座ったところで自分の意思に関係なく体が停止してしまった。皆の声はよく聞こえている。
「え、吐きそう?」
「どうすんのよ、家どこ?」
「真籐さんと同じ……あ、東京マンションって言ってました」
「へー、いいところ住んでんだ」
「大丈夫です、分かります」
ぐるぐる回る会話の中で、ようやく言葉を発することができる。
「何が分かるの?」
「……今が」
「とりあえず、立てる?」
「俺が連れて帰ります」
またなんでこの人は……こんな大勢の前で……。
「どうしたの香月さん(笑)」
と太政に笑われる。しかし、ここで大人数で話をしてもいいと思い、香月は目の前の太政に、
「二課の斉藤さんって彼女がいるんですか?」
成瀬は笑った。
「斉藤? あのマッチョ?」
前髪を長く伸ばし、真ん中で分け、耳のあたりでハネさせているいかにもモテヘアーの太政は、少し眉を潜めた。
「はい」
「いやー、知らない。香月さん狙ってんの?(笑)」
「いやそんなまさか、滅相もない(笑)」
一同爆笑。
「一時期あったわよね、隣の恵が付き合ってるって噂が」
やはり真中夫人、女は噂話に強い。
「ありましたよね、僕も聞きました」
と、成瀬。
「へええええ、それは吃驚! あんなおとなしそうな恵さんが……、斉藤と……」
太政がこんなに目を丸くしたところを始めて見たが、どんな顔をしても、整った顔に変わりはない。
「斉藤さん最近香水きつい時があるのよねえ、あれどうにかしてほしいわ」
「やっぱり彼女ができたからじゃない?」
「……どうかと思うけどねえ」
それからしばらく斉藤の話で盛り上がり、二課の噂話をしているうちに、時刻は12時5分前、つまり、閉店5分前である。
太政が暗算一秒で割り勘の計算をし、香月一人が驚き、勘定は終わった。
「香月さん、大丈夫?」
「やだもう、何飲んだのよー」
「顔色悪いよ」
靴を履こうと思って、靴を探しながら座ったところで自分の意思に関係なく体が停止してしまった。皆の声はよく聞こえている。
「え、吐きそう?」
「どうすんのよ、家どこ?」
「真籐さんと同じ……あ、東京マンションって言ってました」
「へー、いいところ住んでんだ」
「大丈夫です、分かります」
ぐるぐる回る会話の中で、ようやく言葉を発することができる。
「何が分かるの?」
「……今が」
「とりあえず、立てる?」
「俺が連れて帰ります」
またなんでこの人は……こんな大勢の前で……。