絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「え、そうなの? 言ってくれればいいのに」
香月はもう一度笑ったが、巽はそれに答えず、また昨日と同じ酒を出して来ている。
「また飲むのぉ」
「口直しだ」
って、私のせいですか?
「起きろ、遅刻するぞ」
低い声が、少し上から降ってくる。
「…………何時?」
香月は目を少し開きながら声を出した。
「6時半」
6時半……いつも起きるのは6時半……。目ざまし、鳴った?
「え、待って」
香月は半分起き上がりながら、頭をフルスピードで回転させ始める。
巽は既に戦闘態勢に入っているようで、完全ダークスーツのフル装備だ。
いや、今はそんなことはどうでもいい。今日は何曜日だったか? 水曜、木曜、金曜? ってことは、出社?
「え、待って、待って……6時半、7時半、8時半……」
「仕事だろ?」
昨日の夕方、今日が仕事であるということは少し頭をよぎったが、その後の疲労で完全にすべてを忘れ、朝まで熟睡してしまっていたらしい。
「え、待って。服とかない。一回家帰って、7時半、8時半……」
「スーツくらい用意してやる」
「えっ!? あるの!?」
「用意させる」
「…………、タンスに元彼女のがあるとか? まあそれでもいいや」
「新品だ」
「あそう……。えー、だって化粧品とかないし……鞄はまあいいや、携帯、財布……」
「7時半には出るぞ」
「ここからだと中央ビルまで30分で着くよね?」
「ギリギリに着く気か」
「そだね……。いつも8時15分くらいだから、丁度いいか……」
とりあえず体を起こす。
「ご飯は?」
「置いてある」
一つあくびをしてから、ベッドを抜けた。巽は既に食事を済ませたようだ。ということは、まさか巽の手料理?
「頂きます」
そんなはずはない。完全にホテル仕様のモーニングを前に、昨日のテーブルではなく、今日はダイニングの椅子に座ってすぐに食べ始めるが、食欲は特にない。夕方に調子に乗って酒を飲みすぎたせいもあるし、第一体がだるくて痛い。
「あ、ハブラシとかある? 昨日から磨きたかったんだけど……」
「その辺りにあるだろ」
香月はもう一度笑ったが、巽はそれに答えず、また昨日と同じ酒を出して来ている。
「また飲むのぉ」
「口直しだ」
って、私のせいですか?
「起きろ、遅刻するぞ」
低い声が、少し上から降ってくる。
「…………何時?」
香月は目を少し開きながら声を出した。
「6時半」
6時半……いつも起きるのは6時半……。目ざまし、鳴った?
「え、待って」
香月は半分起き上がりながら、頭をフルスピードで回転させ始める。
巽は既に戦闘態勢に入っているようで、完全ダークスーツのフル装備だ。
いや、今はそんなことはどうでもいい。今日は何曜日だったか? 水曜、木曜、金曜? ってことは、出社?
「え、待って、待って……6時半、7時半、8時半……」
「仕事だろ?」
昨日の夕方、今日が仕事であるということは少し頭をよぎったが、その後の疲労で完全にすべてを忘れ、朝まで熟睡してしまっていたらしい。
「え、待って。服とかない。一回家帰って、7時半、8時半……」
「スーツくらい用意してやる」
「えっ!? あるの!?」
「用意させる」
「…………、タンスに元彼女のがあるとか? まあそれでもいいや」
「新品だ」
「あそう……。えー、だって化粧品とかないし……鞄はまあいいや、携帯、財布……」
「7時半には出るぞ」
「ここからだと中央ビルまで30分で着くよね?」
「ギリギリに着く気か」
「そだね……。いつも8時15分くらいだから、丁度いいか……」
とりあえず体を起こす。
「ご飯は?」
「置いてある」
一つあくびをしてから、ベッドを抜けた。巽は既に食事を済ませたようだ。ということは、まさか巽の手料理?
「頂きます」
そんなはずはない。完全にホテル仕様のモーニングを前に、昨日のテーブルではなく、今日はダイニングの椅子に座ってすぐに食べ始めるが、食欲は特にない。夕方に調子に乗って酒を飲みすぎたせいもあるし、第一体がだるくて痛い。
「あ、ハブラシとかある? 昨日から磨きたかったんだけど……」
「その辺りにあるだろ」