絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「何? 誰かの誕生日」
「違う」
「えー……さあ?」
「何かあったかな……」
真籐もユーリもぼんやり考えている。
「シルクドソレイユ公開日!」
「えっ、もしかして、行くん!?!?」
「ふふふふふ……」
「え―! すごいやん! あれ、レイも行きたがってたよ」
レイこと、レイジは数か月前まで真籐の代りに同居していた、今や時の人でもあるロックミュージシャンである。
「ふふふふふふふふふ……」
「え、行くんやろ?」
ユーリは顔を顰めて聞き直してきた。食いつきはばっちりである。
「そうなのだ。今日たまたま知り合いに会って、チケットあるから行こうって」
誘ったのは私だが。
「え―、そんな知り合いがおったとは……」
「ああいうのはなかなか手に入らないでしょう」
真籐はその辺の事情をよく知っている。根っからのお金持ちなのだ。
「うんそう、なんか私もどういうルートなのか知らないけど、チケットがあるっていうからさあ、ふふん(笑)」
「それ、シルクドソレイトっていうレイトショーのチケットかなんかじゃなくて?」
「やめてよね、夢壊すの」
「へえー、にしても、すごいなあ。行きたかったなあ、俺も」
「まだチケット買えるんじゃない? 高いの?」
「買えんよ! この先一年分売り切れよ」
「え、うっそお!!」
「そんなことも知らんのかいな」
「え―、すごいもんもらっちゃったなあ」
いやまだ貰ってないけど。
「大事にしといた方がええよ、その友達」
「うんまあ、そのつもり(笑)」
「えー、新しい彼氏?」
ユーリは鋭いのではなく、単に何も考えずに喋っているだけだ。
「ううん、ただの知り合い。だけど多分お金持ち」
「やろなあ……俺はしくしくネットで予告見るか」
「そうそう、お姉さまがちゃんとこの目に焼き付けてきてあげるからねー」
という具合。
そして時刻は当日の8時25分。ちゃんと時計を確認して、家を出る。リビングには誰もいない。
講演を見に来る人の服装が結構正装に近い感じがしたので迷ったが、ブーツにジーパンを履いて、ショルダーバックだけ肩にかけて、手ぶら。かろうじて頭には帽子。
思い切りカジュアルにした。だって仕方ない。ショーがあるからといっても、遊園地にドレスを着ては行けないし、持っていくような服もない……。
そこで思い出した。いや、あの人、スーツ以外の服なんて持ってるんだろうか……?
エレベーターを降りて、ロビーに出るなり驚いた。エントランスには既に明らかな高級車が停車している。
しまった、待たせた!
「違う」
「えー……さあ?」
「何かあったかな……」
真籐もユーリもぼんやり考えている。
「シルクドソレイユ公開日!」
「えっ、もしかして、行くん!?!?」
「ふふふふふ……」
「え―! すごいやん! あれ、レイも行きたがってたよ」
レイこと、レイジは数か月前まで真籐の代りに同居していた、今や時の人でもあるロックミュージシャンである。
「ふふふふふふふふふ……」
「え、行くんやろ?」
ユーリは顔を顰めて聞き直してきた。食いつきはばっちりである。
「そうなのだ。今日たまたま知り合いに会って、チケットあるから行こうって」
誘ったのは私だが。
「え―、そんな知り合いがおったとは……」
「ああいうのはなかなか手に入らないでしょう」
真籐はその辺の事情をよく知っている。根っからのお金持ちなのだ。
「うんそう、なんか私もどういうルートなのか知らないけど、チケットがあるっていうからさあ、ふふん(笑)」
「それ、シルクドソレイトっていうレイトショーのチケットかなんかじゃなくて?」
「やめてよね、夢壊すの」
「へえー、にしても、すごいなあ。行きたかったなあ、俺も」
「まだチケット買えるんじゃない? 高いの?」
「買えんよ! この先一年分売り切れよ」
「え、うっそお!!」
「そんなことも知らんのかいな」
「え―、すごいもんもらっちゃったなあ」
いやまだ貰ってないけど。
「大事にしといた方がええよ、その友達」
「うんまあ、そのつもり(笑)」
「えー、新しい彼氏?」
ユーリは鋭いのではなく、単に何も考えずに喋っているだけだ。
「ううん、ただの知り合い。だけど多分お金持ち」
「やろなあ……俺はしくしくネットで予告見るか」
「そうそう、お姉さまがちゃんとこの目に焼き付けてきてあげるからねー」
という具合。
そして時刻は当日の8時25分。ちゃんと時計を確認して、家を出る。リビングには誰もいない。
講演を見に来る人の服装が結構正装に近い感じがしたので迷ったが、ブーツにジーパンを履いて、ショルダーバックだけ肩にかけて、手ぶら。かろうじて頭には帽子。
思い切りカジュアルにした。だって仕方ない。ショーがあるからといっても、遊園地にドレスを着ては行けないし、持っていくような服もない……。
そこで思い出した。いや、あの人、スーツ以外の服なんて持ってるんだろうか……?
エレベーターを降りて、ロビーに出るなり驚いた。エントランスには既に明らかな高級車が停車している。
しまった、待たせた!