絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 と、強く突っぱねてしまう。自分を心配してくれるのが宮下だという状況に溜息をつきながら、もう一度エレベーターに乗ろうとその前で待つ。なるべく、無心で。今日のこの日が、なかったことになるのではないかと、ありもしない、考える必要もないことだけを目の前に置いて。
 すぐに扉は開く。
「おはよう」
 前を見る、太政だ。
「……おはようございます」
 とりあえずすり抜ける。
「吃驚したよ、今朝。リムジン出勤じゃない」
「あ、いえ……」
 既に一階のボタンを押していた。
 顔を伏せたまま、扉が閉まっていく。
 まあいいや、太政だし。
 来るんじゃなかった、無理せずに休めばよかった。
 一階に着いて、扉が開く。
 ……どこに行こう……。
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