絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
また、佐伯の天然ボケが始まったと思った。それくらい矛盾を感じた会話であった。
そもそも西野は、ルームシェアをしていたシングルマザーでもあり幼馴染でもある女の子が生んだ子供の世話をしていた。今は、段取りをつけてその子を施設に入れてやり、母親もどこかで働いていると聞いているが、それは西野の弱い者を放っておけないという性格からきた行動というよりは、結婚に対する憧れの延長からきた行動であるような気もしていた。
「え、何? そんなの初めて聞いた」
話の核を少しずつずらしていく。
「うん、本人は言わないって言ってたから」
「え――――、それ勝手に言っていいの?」
「いいんですよ。だって先輩は本人には言わないでしょ?」
「……まあ……」
「西野さん、バカなんですよ……。子供いたじゃないですか、施設に預けた子」
「うん」
「あの子やっぱり引き取るって」
「え――――――――――!? 何で? 一人で? それとも、結婚?」
「やっぱりずっと気になってたみたいで……で、先輩が振り向いてくれないことは分かってるから、それなら、その子のことを気にしようって」
「え……何で私……」
まるでこちらにせいにされたような気がして、納得がいかないという気持ちが前に出る。
「で? まさかその……その子と結婚するの?」
「みたいですよ」
「……………」
「先輩、西野さんと結婚しようとは思いませんか?」
佐伯の視線がいつになく真剣なことは伝わったが、それだけで何かを変えられるはずはなかった。
「え、ちょっと待ってよ! 私そんな……」
「だってなんか……見てて悲しいっていうか……」
「私だって、悲しくないことはないけど!……え……ちょっと待って、待って、待って」
目を閉じて、その、強い視線から逃れる。そして、考えようとする。
「はい」
佐伯は低く返事をした。
「……聞かなかったことにしよう」
とりあえず続きのハンバーガーをかじる。頭の中はごちゃごちゃだったが、それ以外の方法が見つからなかった。
「……次、何乗ります?」
佐伯もポテトをかじりながら言う。
「…………吉田君、何乗りたい?」
一番端っこで既に昼食をほぼ平らげていた彼に、香月は聞いた。
そもそも西野は、ルームシェアをしていたシングルマザーでもあり幼馴染でもある女の子が生んだ子供の世話をしていた。今は、段取りをつけてその子を施設に入れてやり、母親もどこかで働いていると聞いているが、それは西野の弱い者を放っておけないという性格からきた行動というよりは、結婚に対する憧れの延長からきた行動であるような気もしていた。
「え、何? そんなの初めて聞いた」
話の核を少しずつずらしていく。
「うん、本人は言わないって言ってたから」
「え――――、それ勝手に言っていいの?」
「いいんですよ。だって先輩は本人には言わないでしょ?」
「……まあ……」
「西野さん、バカなんですよ……。子供いたじゃないですか、施設に預けた子」
「うん」
「あの子やっぱり引き取るって」
「え――――――――――!? 何で? 一人で? それとも、結婚?」
「やっぱりずっと気になってたみたいで……で、先輩が振り向いてくれないことは分かってるから、それなら、その子のことを気にしようって」
「え……何で私……」
まるでこちらにせいにされたような気がして、納得がいかないという気持ちが前に出る。
「で? まさかその……その子と結婚するの?」
「みたいですよ」
「……………」
「先輩、西野さんと結婚しようとは思いませんか?」
佐伯の視線がいつになく真剣なことは伝わったが、それだけで何かを変えられるはずはなかった。
「え、ちょっと待ってよ! 私そんな……」
「だってなんか……見てて悲しいっていうか……」
「私だって、悲しくないことはないけど!……え……ちょっと待って、待って、待って」
目を閉じて、その、強い視線から逃れる。そして、考えようとする。
「はい」
佐伯は低く返事をした。
「……聞かなかったことにしよう」
とりあえず続きのハンバーガーをかじる。頭の中はごちゃごちゃだったが、それ以外の方法が見つからなかった。
「……次、何乗ります?」
佐伯もポテトをかじりながら言う。
「…………吉田君、何乗りたい?」
一番端っこで既に昼食をほぼ平らげていた彼に、香月は聞いた。