絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「S級ジェットコースター」
「お、いいね」
香月は、突然笑顔になったが、
「え―、それは最後にしましょうよ、私苦手」
「あ、そうなの? じゃあ軽いのから行こうか。吉田君、何がいい?」
「何でも」
「じゃあ……ダンボくらいにする?」
佐伯は口をもごもごさせながら、指で○を作って頷いた。吉田も何も言わない。これで次の乗り物はダンボに決まった。
散々遊んだその帰りの午後6時、電車が混んでいたことから、既に吉田の姿は見失われ、香月と佐伯は2人、乗車ドアの隅っこで固まっていた。
「これからどうするの?」
香月の問いに、佐伯は即
「寝ます!」
「いや(笑)もう誘おうと思ってないから(笑)」
「寝ます、私は! 明日朝一から仕事ですよ本当に……、先輩もでしょ?」
「えー、あー、うーん、そう」
「明日もさぼりですか?」
「えー……そんな休めないよ。だってしかも水曜、木曜連休だったし」
「そんで金曜日さぼり? それはまずいですよ……。そんなに嫌なんですか、本社」
「最初は本当に嫌だったよ。だけど成瀬さんって人が世話役になってくれてて、気さくな人でね」
「あ、知ってます。香月先輩と同じくらいですよね?」
「あ、そうだ、同期なんだ。そう、その人」
「前に小野寺さんと噂あった人ですよ」
「え――――!? 嘘、ほんと?」
「いや、結局は噂だけって感じでしたけどね」
「うわー、聞いてみよ」
「古い噂ですよ」
「へえー……でまあ、そう。でねー……そうだ、今日宮下店長がうち来るんだった」
「何で?」
「……家庭訪問?」
「問題児なんですね」
「えー……だってなんか仕事したくなかったんだもーん」
「そんなの皆一緒ですよ! 私だって最近吉川店長うざいから嫌ですよ」
「あー、私も嫌い」
「なんかもうセクハラ臭プンプン!」
「ほんとあの人危ないよ。さらっと誘うからね」
「やっぱり誘われたんですか」
「やっぱりって何よ。けど流してたよ、最初は嫌で考え込んでたけど、宮下店長にたまたま相談しながら話してたら、そういえばなんか私の考えすぎ? みたいな感じで」
「どんな?」
「えー……何だったかな……、僕が結婚してなかったら香月さんを口説くのに惜しいなあみたいな」
「ヴわ―」
「ね? けど、そういわれたからって何されたわけでもないし……嫌いだから嫌なんだって思ったら、楽になった」
「まあそうなんですけどね……あれですよ、小野寺さんとは不気味に仲いいですからね」
「え、そうなの?」
「けどなんかねえ、小野寺さんって小悪魔的だから、売名行為なんじゃないかとも言われてます」
「お、いいね」
香月は、突然笑顔になったが、
「え―、それは最後にしましょうよ、私苦手」
「あ、そうなの? じゃあ軽いのから行こうか。吉田君、何がいい?」
「何でも」
「じゃあ……ダンボくらいにする?」
佐伯は口をもごもごさせながら、指で○を作って頷いた。吉田も何も言わない。これで次の乗り物はダンボに決まった。
散々遊んだその帰りの午後6時、電車が混んでいたことから、既に吉田の姿は見失われ、香月と佐伯は2人、乗車ドアの隅っこで固まっていた。
「これからどうするの?」
香月の問いに、佐伯は即
「寝ます!」
「いや(笑)もう誘おうと思ってないから(笑)」
「寝ます、私は! 明日朝一から仕事ですよ本当に……、先輩もでしょ?」
「えー、あー、うーん、そう」
「明日もさぼりですか?」
「えー……そんな休めないよ。だってしかも水曜、木曜連休だったし」
「そんで金曜日さぼり? それはまずいですよ……。そんなに嫌なんですか、本社」
「最初は本当に嫌だったよ。だけど成瀬さんって人が世話役になってくれてて、気さくな人でね」
「あ、知ってます。香月先輩と同じくらいですよね?」
「あ、そうだ、同期なんだ。そう、その人」
「前に小野寺さんと噂あった人ですよ」
「え――――!? 嘘、ほんと?」
「いや、結局は噂だけって感じでしたけどね」
「うわー、聞いてみよ」
「古い噂ですよ」
「へえー……でまあ、そう。でねー……そうだ、今日宮下店長がうち来るんだった」
「何で?」
「……家庭訪問?」
「問題児なんですね」
「えー……だってなんか仕事したくなかったんだもーん」
「そんなの皆一緒ですよ! 私だって最近吉川店長うざいから嫌ですよ」
「あー、私も嫌い」
「なんかもうセクハラ臭プンプン!」
「ほんとあの人危ないよ。さらっと誘うからね」
「やっぱり誘われたんですか」
「やっぱりって何よ。けど流してたよ、最初は嫌で考え込んでたけど、宮下店長にたまたま相談しながら話してたら、そういえばなんか私の考えすぎ? みたいな感じで」
「どんな?」
「えー……何だったかな……、僕が結婚してなかったら香月さんを口説くのに惜しいなあみたいな」
「ヴわ―」
「ね? けど、そういわれたからって何されたわけでもないし……嫌いだから嫌なんだって思ったら、楽になった」
「まあそうなんですけどね……あれですよ、小野寺さんとは不気味に仲いいですからね」
「え、そうなの?」
「けどなんかねえ、小野寺さんって小悪魔的だから、売名行為なんじゃないかとも言われてます」